交流実践紹介 異校種間交流

電子メールを使った交流
日進市立日進西中学校
 
 昨年度より、技術・家庭科の学習内容『保育』の分野で保育園児との交流実習を行っている。本年度も昨年度と同様に、3年生の生徒が保育園の園児との交流実習を行った。
 生徒は、おもちゃの役割と幼児にふさわしいおもちゃの条件について考えながら、楽しいだけでなく、発達段階や安全面、音や形にも注目しながら園児に合ったおもちゃを作ることになっている。また、作成したおもちゃは保育園実習に持参して、保育の場で実際に用いることになっている。おもちゃの作成に当たり、クラスを3つの講座(裁縫等でおもちゃを作る講座、木工等でおもちゃを作る講座、コンピュータを使っておもちゃを作る講座)に分け、園児へのおもちゃ作りを進めた。その中に、紙芝居をパソコンで作ったグループが数グループあった。
 この交流活動のメインは、実際に近くの保育園に直接行って交流する活動であるが、電子メールなどの情報機器を上手に活用することで、遠くの保育園の園児と直接会わなくても交流する活動も実践することにした。

日進西中学校の実践

1 交流計画の計画
時  期 内   容
4月 年間計画の立案
6月 交流相手を探す
7月 年間計画の見直しと修正
 9〜10月 交流準備(3時間)
10〜11月 直接保育園を訪問しての交流体験活動
12月 電子メールなどを用いた遠隔地の保育園との交流

2 交流の準備

 おもちゃ作りは、3つの講座に分かれて進めた。授業時間が週1時間であるため、制作時間の確保が難しかったが、こうした形での実践が2年目ということもあり、教師側で先を見通した指示を出すことができた。交流会当日までの準備の時間は3時間あり、コンピュータを使っておもちゃを作る講座では、次のような段取りで作業を進めさせた。
  1時間目 紙芝居の全体構図作り(下絵、役割分担、台詞)
  2時間目 紙芝居作り
  3時間目 紙芝居作り、予行練習

【直接保育園を訪問しての交流体験活動】
 昨年度はプレゼンテーションソフトを使って紙芝居を作成し、そのデジタルデータを保育園に持って行って上映する方法で紙芝居を実施した。しかし、相手の保育園の設備や環境等を考えると、直接訪問して交流する際には印刷して持っていった方がよいと感じたため、今年度は各グループが印刷した紙芝居を持参することにした。丁度、紙芝居の作成時期が合唱コンクールと重なったため、合唱コンクールの歌の歌詞を題材にして紙芝居を作成する生徒もいた。

【紙芝居の一場面】
3 交流の実際
 
 実際に訪問できない遠くの幼稚園との交流として、デジタルデータの画像とせりふをメールで送信する方法を昨年度は実施した。今年度は新たな試みとして、紙芝居にせりふを入れて、DVDの動画風の形にしてみようということになった。
 学級で話し合う中で、合唱の歌を直接入れて紙芝居にしてみたいという意見があり、技術・家庭科の授業から、学級活動や音楽の時間も活用して、合唱練習、録音、紙芝居作り、ビデオ編集などが同時進行で行われた。かなりの時間を費やしたが、生徒の手で作り上げた作品がやっとでき、早速、保育園に送信した。

   実際に送信した紙芝居の絵を見ることができます。
    ボタンをクリックしてください。⇒
  
実物は合唱曲に合わせてコマ送り
    をしましたが、著作権の関係で歌
    は入っていません。)



電子紙芝居
「若返りの水」


【DVD紙芝居の一場面】
 保育園の保育士さんからの返事と、上映風景は以下のようであった。

《A保育園》
子供たちの様子をお知らせします。
・曲でしかも合唱だったので、言葉の聞き取りが悪く、内容が伝わりにくかった。もっと単純な言葉の方が分かりやすいのではないか。(5歳児という発達段階からみて)
・歌と画面の関係を知らせてからもう一度見てみると、歌も聞こうとする姿勢がみられた。
・2回目ということもあり、落ち着いており、若返る場面ごとに「分かった」「そうか、分かった」という声が聞こえてきた。

【A保育園での上映の様子】

《B保育園》
紙芝居 、見せていただきました。
子供は、男子7名、女子14名の21名です。
子供たちの感想
・おじいさんの顔がおもしろかった。
・歌がおもしろかった。
・でも、意味が分からん。
子供たちの視聴の様子
・映像はよく見ていました。
・おじいさんやおばあさんの表情に反応し、笑っていました。  
・意味が分からない子がほとんどでしたが、「水を飲んで、じいさんが赤ちゃんになったんだよ。」と言っている子もいました。
・もう一回見たいとリクエストがあり、2回目は歌をじっくり聞いていたようでした。
・実は、3回見ました。リズムのよい水を飲む場面でツボにはまったようでまねして歌ったり、体でリズムをとったりする子もいました。

【B保育園での上映の様子】

成果と課題 

 こうした取組が2年目ということもあり、先を見通した実践をすることができた。
 4月当初は、ネットモラルやインターネットの利点や欠点、メールや掲示板チャットの使い方について学習した。メールなどにより今後交流をすることを意識してこの学習を進めることができたため、個人名などの個人情報を出さないとか著作権を考慮して作品を作るなど、ネットモラルを昨年度よりしっかり押さえることができた。この後、生徒たちはこうしたことを意識して作品の制作に取り組めた。
 本実践のような交流活動は、作品を外部に発信して、純粋に楽しいものに興味をもつ園児に直接評価してもらえる活動であるため、生徒の作品制作に取り組む意欲は高くなる。今後も毎年工夫を重ねながら、継続していきたい活動と考える。
 昨年度はプレゼンテーションのデータとワープロソフトで書いたせりふをメールで送信し、保育士さんがプロジェクタで放映しながら実際に読み聞かせをする形式であったが、今年度は音声が入った動画紙芝居を何とか作ってみようと生徒たちは意欲的に取り組んだ。しかし、技術・家庭科の限られた授業時間の中では、動画の編集までは十分にできず、授業後や学級活動も活用することとなった。受験を控えた3年生にとってその作業は負担となり、完成したのが予定より遅れて1月になってしまった。この点は、反省すべきことの一つである。
 作品として、自分たちの歌った合唱が紙芝居の形になり生徒自身は満足していたが、園児にとっては内容が難しすぎた。十分考えられた昔話ではあったが、合唱をせりふとして使ったことで言葉の一言一言がはっきりせず、また言葉の強弱や場面変更も分かりにくかったようであった。園児のおもちゃとしての評価としては、あまり良いものではなかった。
 この交流実践は直接交流を主たる目的としているが、実際に交流時間を多く確保するのはなかなか難しい。そこで、電子メールなどを活用することが有効と考えるが、今回のような異校種間交流である場合は特に交流先のことを事前に十分に知り、多くの時間をとりながらじっくり検討していく必要があると感じた。交流活動は、生徒の意欲を高めることができるという面では素晴らしい活動であることは確かであるが、ネットワークを活用した交流活動を、いかに短時間に効率よくスムーズに進められるかが課題である。そうした面から、テレビ会議システムを活用した形で、リアルタイムで遠くの学校と交流できるようなプランを今後は考えていきたい。

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